*

ばあちゃん

公開日: : 泣ける話

Pocket

子どもの頃夏休みになる度に母方のばあちゃん家に遊びに行っていた。

ばあちゃん家は車で2時間くらいの山の中の集落。

じいちゃんはとっくに死んでて一人暮らし。

近くにおばちゃん夫婦が住んでて面倒みてた。

俺が遊びに行く度にばあちゃんは喜んであれこれご馳走してくれた。

俺専用のおもちゃ箱が置いてありプラスチックの野球セットとか虫かごとかが入ってた。

『すぐ遊べるように洗っておいたよー』ばあちゃんはニコニコしながら言ってた。

すぐ裏手が山だったのでカブトムシなんかもたくさんいて、ばあちゃん家は結構お気に入りの場所だった。

でもそれも小学校高学年まで…

学校の友達と遊んでたほうが楽しいし、まして中学に入れば部活もあったし、自然とばあちゃん家訪問は夏休みの行事から消えていった。

最後に行ったのは小5の時だったと思う。

そんなのが寂しかったのか、夏休みが近くなる度に、ばあちゃんから電話がかかってきた。

母親から『たまに顔見せてこい』とも言われてた。

その度に『う~ん』と生返事をしやり過ごしていた。

少しわずらわしくもあった。

毎年そんな感じで中学、高校の夏休みを過ごし、俺は大学生になっていた。

大学3年の夏休み8月になったばかりの昼頃、だらだら寝てた俺は母親から叩き起こされた。

ばあちゃんが亡くなったらしいその日、おばちゃんがばあちゃん家を訪ねたところ、台所で倒れていたらしい。

亡くなったのは前日の夜、くも膜下出血との事。

ばあちゃんの遺体が夕方、病院から戻るとの事で母親と妹の3人でばあちゃん家に向かう。

車は俺が運転した。

なんか現実感がない。

ぼーっとしている。

母親は助手席で黙りこくっている。

妹は後ろで泣いていた。

夕方頃、ばあちゃん家に着いて遺体と対面する。

10年ぶりくらいの対面でも、ばあちゃんは冷たくて、白くて、小さい。

泣き出す母親と妹の横で、俺はやっぱりぼーっとしてる。

頭にモヤがかかった感じ。

涙は出てこない。

(俺って冷たいのかな?)

そんなことを思ったりしていた。

なんとなく居たたまれなくなって庭に出てみる。

庭の隅にあるばあちゃんの納屋。

子どもの頃よくここで遊んで怒られた。

中に入ってみるといろんなものが置いてある。

全部、ホコリまみれ。

このホコリの匂いは子どもの頃と変わらない。

足元に俺のおもちゃ箱を見つけるプラスチックのバッドボール、虫かご、ミニカー…

『?』

次の瞬間気付いた、これ一つもホコリが付いてない!

慌てて箱を抱えて、おばちゃんの所へ駆け出す。

『おばちゃん、これ…?』

おばちゃんは最初怪訝な顔をしてたけど、俺の聞きたい事に気付いて

『それはねぇ、ばあちゃんが毎年、夏になると洗ってたのよ。

Mちゃん(俺)がいつ来ても遊べるようにって…

もう、そんな年じゃないよって言ったんだけどきかないのよねぇ』

おばちゃんは泣いたような笑顔だった。

初めて泣いた。

もう箱を抱えて

座り込んで大声で泣いた。

10年もばあちゃんは俺を待ってた。

俺のおもちゃを洗いながらずっと待ってたのに…

『遊びにおいで』

何十回も言ってたのに、なんでこんなに人は人のことを想い続けられるんだろう?

そして俺はそんな想いをこんな風に形にして、目の前に出してもらわないと分からない。

自分がくだらなくて愚かな人間に思えた。

ばあちゃん、ごめんなさい。

いつでも会えるんだからと後回しにしてた、ばあちゃんがいることが当たり前だと思ってた。

それがずっと続くことが当たり前だと思ってた。

ばあちゃん…

ほんとにごめんなさい。

q01415

AD googleアドセンス

関連記事

3年越しの結婚式に流れたビデオレターに感動

余命幾ばくも無い母のために挙げようとした結婚式にまつわるお話です。   新郎新

記事を読む

約束していたお子様ランチ

ある日、若い夫婦が2人でディズニーランドのレストランに入ってきました。 夫婦は2人掛けのカップル

記事を読む

癌で死ぬ怖さより-余命宣告-

ぶっちゃけて、俺はもうすぐ死ぬ。 末期だからって医者も自由にしなさいってさ。

記事を読む

家猫クロとおふくろの関係。

中学生の頃に猫を飼った。 家族みんなが(特に母が)黒猫が好きで、満場一致で知り合いから黒子猫を貰っ

記事を読む

ビールは横に冷やすとうまい、と父は言っていた

ビールは横に冷やすとうまい、と父は言っていた。 そんなわけはないと、と言っても聞かず、冷蔵庫に決ま

記事を読む

父親の職場

大卒から勤続8年目。 俺は上司含め、同僚が苦手。 というかあまり好きではなかった。 ワ

記事を読む

初めての結婚記念日

入社4年目で初めての結婚記念日の日。社内でトラブルが発生した。 下手したら全員会社に泊まりに

記事を読む

まだまだどうなるかわからないけどゆめも頑張ってるよ!

「まだまだどうなるかわからないけどゆめも頑張ってるよ!」 私が高校生の冬でした。家で飼ってる猫が赤

記事を読む

馬鹿な彼女・・・でも本当にバカだったのは俺だった。。。

俺には可愛い彼女がいた 性格は素直でスタイルも良かったが周囲からは 「えwあの女と付き合ってるの

記事を読む

言葉ひとつ

あるご主人が病気で奥さんを亡くされて、初めてキッチンで家事をしたそうです。 そのときにキッ

記事を読む

AD googleアドセンス

AD googleアドセンス

だんだんあなたが見えなくなってくる

だんだんあなたが見えなくなってくる 彼女は視力がどんどん弱くなる

相手のスマホには不幸な事実しかない???

だいたい、彼氏や彼女、旦那さんや奥さんのスマホにはお互いに秘密の闇があ

夫婦ケンカの次の日のお弁当

その夫婦にしか分からない「夫婦喧嘩の仲直り方法」。言葉には出来なかった

3年越しの結婚式に流れたビデオレターに感動

余命幾ばくも無い母のために挙げようとした結婚式にまつわるお話です。

女性が結婚式を特に大切に思い、こだわる理由とは?

兄が「なんで女って結婚式にこだわるんだろう」って言ったとき 奥さ

→もっと見る


PAGE TOP ↑