*

プロ野球のチケット

公開日: : 最終更新日:2014/12/09 泣ける話

Pocket

幼い頃に父が亡くなり、母は再婚もせずに俺を育ててくれた。

学もなく、技術もなかった母は、個人商店の手伝いみたいな仕事で生計を立てていた。

それでも当時住んでいた土地は、まだ人情が残っていたので、何とか母子二人で質素に暮らしていけた。

娯楽をする余裕なんてなく、日曜日は母の手作りの弁当を持って、近所の河原とかに遊びに行っていた。

給料をもらった次の日曜日には、クリームパンとコーラを買ってくれた。

ある日、母が勤め先からプロ野球のチケットを2枚もらってきた。

俺は生まれて初めてのプロ野球観戦に興奮し、母はいつもより少しだけ豪華な弁当を作ってくれた。

野球場に着き、チケットを見せて入ろうとすると、係員に止められた。

母がもらったのは招待券ではなく優待券だった。

チケット売り場で一人1000円ずつ払ってチケットを買わなければいけないと言われ、

帰りの電車賃くらいしか持っていなかった俺たちは、外のベンチで弁当を食べて帰った。

電車の中で無言の母に「楽しかったよ」と言ったら、

母は「母ちゃん、バカでごめんね」と言って涙を少しこぼした。

俺は母につらい思いをさせた貧乏と無学がとことん嫌になって、一生懸命に勉強した。

新聞奨学生として大学まで進み、いっぱしの社会人になった。

結婚もして、母に孫を見せてやることもできた。

そんな母が去年の暮れに亡くなった。

死ぬ前に一度だけ目を覚まし、

思い出したように「野球、ごめんね」と言った。

俺は「楽しかったよ」と言おうとしたが、

最後まで声にならなかった。

z00652

AD googleアドセンス

関連記事

3年前に父親が死にました。

3年前に父親が死にました。 自営業だった工場が倒産して借金だけが残って それを返済するために他か

記事を読む

ひとつ上のお兄ちゃん

三歳ぐらいの時から、毎日のように遊んでくれた1コ上の兄ちゃんがいた。 成績優秀でスポーツ万能。しか

記事を読む

自閉症の弟に対する他人の暴言に返した6歳兄の言葉が・・・

わが家は6歳と4歳の男の子ふたり。 弟は自閉症で、週に数回通所施設を利用している。 今日

記事を読む

生まれながらに才能のある者は

生まれながらに才能のある者は、 それを頼んで鍛錬を怠る、 自惚れる。 しかし、 生まれつきの

記事を読む

娘の言葉

電気工事士として引き抜かれ、 次の会社でも頑張っていたのですが、 その会社が不振になり、 リス

記事を読む

泣いた赤鬼

山の中に、一人の赤鬼が住んでいました。 赤鬼は、人間たちとも仲良くしたいと考えて、自分の家

記事を読む

社会ってそういうものよ

学生時代、貧乏旅行をした。帰途、寝台列車の切符を買ったら、残金が80円! もう丸一日以上何も食べて

記事を読む

ki-se-ki

私に起きた奇跡について 書かせて貰います。 皆に聞いて貰って 初心を忘れないで欲しい。

記事を読む

つかなくてもいい嘘で別れた初恋の人

私が初めて好きになった彼は優しくて、いつも私のワガママを聞いてくれていました。 ですがある日突

記事を読む

写真代わりに、母が書いた自分の絵。

うちは貧乏な母子家庭で、俺が生まれた時はカメラなんて無かった だから写真の変わりに母さんが色鉛筆で

記事を読む

AD googleアドセンス

AD googleアドセンス

だんだんあなたが見えなくなってくる

だんだんあなたが見えなくなってくる 彼女は視力がどんどん弱くなる

相手のスマホには不幸な事実しかない???

だいたい、彼氏や彼女、旦那さんや奥さんのスマホにはお互いに秘密の闇があ

夫婦ケンカの次の日のお弁当

その夫婦にしか分からない「夫婦喧嘩の仲直り方法」。言葉には出来なかった

3年越しの結婚式に流れたビデオレターに感動

余命幾ばくも無い母のために挙げようとした結婚式にまつわるお話です。

女性が結婚式を特に大切に思い、こだわる理由とは?

兄が「なんで女って結婚式にこだわるんだろう」って言ったとき 奥さ

→もっと見る


PAGE TOP ↑