ママ、あたしね


あの頃、わたしは初めての赤ちゃんに無我夢中だった。

ろくに眠らず、夜鳴きもひどかった娘。
へとへとに疲れはてて、抱っこでゆすりながら

『あんたはママを苦しめたいの?
 ほんとにひどい子だ』
と悪態をついた日々。

赤ん坊の気持ちなんて、全然わからない。
母親の自信なんて、みじんもない。
ただ、もがくだけの日々。

あれから数年たって、娘は五歳になった。
「あのね、ママ…」(もじもじ)
「なぁに?」

「あたしね、ママのこと、
 生まれたときからすきだったの」

あの頃の私が一番聞きたかった言葉。
やっと聞けた。
その言葉を聞いて台所でひとり泣いた。

q01340

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