手紙を燃やしながら私は妻に誓った


妻が4年前に事故による不慮の死を遂げ、私と息子の二人だけの生活になった。

息子の世話や毎日の食事の支度に疲れ果て、仕事もうまくいかないことがよくあった。

家事もうまくこなせない私と息子を見て、あの世で妻は悲しんでいるだろうか。

私は父親役と母親役をうまく演じられず、何度も挫折感を味わった。

ある日のこと。

夜遅く家に帰った私は、疲れ果てて食事を作る気力もなく、スーツを脱いですぐにベッドに身を投げだした。

その時、「パン!」という音がして、赤い汁とラーメンが飛び散り、シーツと布団が汚れてしまった。

布団の中に、インスタントラーメンが置いてあったのだ。

なんて子だ!と怒った私は、部屋を出て、おもちゃで遊んでいる息子のお尻を叩いた。

あまりにも腹が立ったのでひどく叩きすぎた。

そのとき、泣き出した息子が私にこう言った。

「炊飯器の中のご飯は朝、全部食べちゃったんだ。

夜ご飯は幼稚園で食べたんだけど、パパがいつまで経っても帰って来ないから、インスタントラーメンを見つけて、シャワー室の熱いお湯で作ったの。

パパがガスは使っちゃいけないと言ったから。

ひとつは自分が食べて、もうひとつはパパに残しておいたんだ。

インスタントラーメンは冷めたら美味しくないから、パパが帰るまでお布団の中に入れておいたの。

おもちゃに夢中になって、パパに言い忘れてた。

ごめんなさい」

息子の話に涙がこぼれた。

それを隠すためにトイレに入り、蛇口を開いて思いっきり水を流しながら号泣した。

しばらく心を落ちつかせてから、まだ泣いている息子を慰め、傷ついた彼のお尻に薬を塗って寝かしつけた。

汚れたシーツと布団を掃除し終わった後、息子の部屋のドアをこっそり開けて様子を見ると、彼は母親の写真を手に握りしめたまま泣いていた。

私は、立ったまましばらくそれを眺めていた。

それ以来、私は母親の役割をもっとうまく演じようと心に決め、多くの時間をかけて息子の世話をするようにした。

1年後やっと、幼稚園を卒業して小学校に入学する時期を迎えた。

幸い、この間あった出来事は息子の心に影を落とさず、彼はのびのびと成長してくれた。

しかしある日、私はまたも息子に手を出してしまった。

幼稚園から突然、息子が幼稚園に来ていないという電話があった。

不安でたまらない私は、すぐに仕事先を早退して家に戻り、息子の名前を何度も呼びながら住宅街の付近を必死で探した。

やっと、文房具屋さんのゲーム機の前で遊んでいる息子を見つけた。

私はまたも頭に来て、息子を叩き始めた。

彼は何の言い訳もせず、ひたすら「ごめんなさい」と謝った。

しばらくして私は、その日幼稚園で母親たちが子どものパフォーマンスを鑑賞する行事があったことを知った。

数日後、息子から幼稚園で字の書き方を教わったと聞いた。

それ以来、彼はしょっちゅう自分の部屋に閉じこもり、まじめに字を書く練習をしていた。

天国にいる妻はきっと、息子の様子を見て安心しているだろうと思うと、なんども涙がこぼれた。

息子は成長し、冬がやって来た。

街中にクリスマス・ソングが流れるシーズンに、私の息子は再び問題を起こしてしまった。

ある日、住宅街にある郵便局からクレームの電話があった。

息子が宛先のない手紙をたくさんポストに投函したのだという。

郵便局にとってこの時期は多忙きわまるシーズンであり、息子のいたずらは彼らにとって大迷惑だったのだ。

もう息子を叩かないと心に決めた私は、急いで帰宅して、息子にそのわけをたずねた。

何も説明せず、ただ謝るばかりの息子に業を煮やし、またもや手を出してしまった。

私は郵便局に行って息子の手紙をもらってくると、彼の前に投げ出して、

「どうしてこんないたずらをするんだ!」と怒鳴った。

息子は泣き出して、「それ、ママに送る手紙なんだ」と答えた。

この話に、私は目頭が熱くなった。

懸命に感情を抑えながら、「どうして一度にこんなにたくさんの手紙をママに出すの?」と聞いた。

「前は郵便ポストに手が届かなかったけど、最近やっと届くようになったから、前に書いた手紙も一緒に出したんだ」と息子は答えた。

一瞬、茫然とした私は、すぐに言葉が出なかった。

しばらくして息子にこう話した。

「ママは天国にいるから、書いた手紙を燃やせば天国に送れるんだよ」

夜、息子が寝た後、私は外に出て息子が書いた手紙を燃やし始めた。

何を書いたのかと思い、何通か読んでみた。

その中の一通に、ひどく心が痛んだ。

「ママへ:

ママに会いたい!

今日、幼稚園でパフォーマンス発表会があったの。

ママがいないから僕は幼稚園に行かなかった。

パパにも言わなかった。

パパがママのことを思い出して悲しくなるから。

パパは僕を探していたんだけど、でも僕はパパに悲しんでる自分を見せたくなかったから、

ゲーム機の前で遊んでる振りをしたんだ。

パパに理由を聞かれたけど、僕は何も言わなかった。
毎日パパは泣いている。

きっと僕と同じでママに会いたいんだ。

ママ、僕の夢に出て来てください。

会いたい人の写真を胸の上に置いて寝れば、

その人が夢の中に出てくると聞いたんだけど、

どうしてママは僕の夢に出てこないの?」

もう何があっても、二度と息子に手を出さないと、

手紙を燃やしながら私は妻に誓った。

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