愛猫の最期
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泣ける話
物心ついた時からずっと 一緒だった猫が病気になった。
いつものように私が名前を呼んでも、腕のなかに飛び込んで来る元気もなくなり、お医者さんにも「もう永くはない」と告げられた。
「今は悲しむよりも最期までこの子のそばにいよう」
私がそう決心して 間もなく猫は家から消えた。家中捜しても見当たらない。
父は
「猫は死ぬ間際、自分の死に場所を 探しに旅に出るっていうからね。
きっとあの子も死期を悟って自分に合った場所を探しに出かけたんだよ。」
と慰めるように言ったが当然私は受け入れられず、町中名前を呼びながら捜し回った。
途中頭を過るあの子との思い出に涙が溢れても、 転んで足を擦りむいても ひたすら名前を呼びながら捜し回った。
やがて日も暮れ、 母に「一度家に戻ろう」 と言われ戻ったとき、 庭の向こうから私以上にボロボロになり、泥だらけになったあの子の姿がこちらに近づいてきた。
涙で霞む目を何度も擦って確認したが間違えなくうちの猫だった。
枯れた声で名前を呼ぶとフラつきながらも精一杯の力で私の腕のなかに飛び込んで来てくれた。
どれくらい経っただろう。
やがてこの子は私の腕のなかで眠るように息を引き取った。
「この子は我が家で暮らしてきて幸せだったのかもしれないな」と父が言ったとき、
少しだけ悲しさが嬉しさに変わった。
私もそう思えた。
この子は最期も私の腕のなかを選んでくれたから。
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