娘の言葉


電気工事士として引き抜かれ、
次の会社でも頑張っていたのですが、
その会社が不振になり、
リストラをせねばならぬ状態になりました。
私は誰かが辞めさせられるなら、
自分が辞めれば一人は救われると思い、
自分から申し出て退社しました。
その後、屎尿汲み取り(役場の現業職)
に従事することになったのです。
妻と長女は事情を理解し、早くに納得したのですが、
長男が反発して一週間も飯を食わないような状態でした。
長女は高校生で、
長男は中学生だったので無理もないことです。
でも、
『職業に貴賎なし。
誰かがやらねばならない仕事が世の中にある。
お前は、もし、友達の父親が汲み取りをしていたら、
そいつと付き合わなくなったり、
その父を軽蔑したりするのか』
と諄々と言い聞かせ、ようやく長男も納得させたのです。
ある日、地元の本屋さんで汲み取り作業をしていたら、
女子高生数人が遠くから来るのが見え、
長女もその中にいました。
友達の手前、こんな父親の姿を恥ずかしく思いやしないかと、
とっさに物陰に隠れようとしたのです。
その時『お父さん、頑張って~』
と離れた所から長女が声をかけてきたのです。
私は、日頃言ってきたことと、
自分のとった行動の違いに情けなさを感じました。
娘の方が人間としてどれほど立派か、
と思い知らされた場面でした。
今でもこの時のことを思うと涙が出てきます。

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