*

お父さんの白い運動靴

公開日: : 最終更新日:2014/11/29 感動する話, 泣ける話

Pocket

わたしの父は、松葉杖をついて一生を過ごした人でした。

そんな父が、つらい歩行練習を始めたのは、長女のわたしが結婚の話をきりだしたころでした。

踏みしめる一歩一歩がどれだけつらそうだったか・・・

そんな父の姿を見るたびに、わたしは心が痛かったのです。

でも、婚約者として今の夫が父に挨拶に訪れた日、
わたしは自分のなかにもうひとりの「自分」がいることに気がつきました。

彼の目に、松葉杖をつく父の姿が映っていると思うと、

嫌で嫌でたまらない「自分」がいることに気がついたのです。

彼が挨拶に訪れた日から、父の歩行練習の回数が増えました。

父の顔には、深くしわがより、苦しい汗がにじみ出ました。

無理しないでといくら言っても、父は同じ言葉を口にするだけでした。

「結婚式で、お前の手をとって式場にはいらなきゃならないじゃないか」

その言葉を聞くたびに、わたしは誰か他の人が代わりに、その役をやってくれることを内心願っていました。

義足をつけて不自然な歩みを繰り返す父の姿を、嫁ぎ先の家族に見せたくなかったのです。

けれど父は、どこで手に入れたのか、白い運動靴まで買ってきて、一生懸命に歩行練習を続けたのです。

結婚式の日が近づくにつれて、わたしは父の気持ちを理解はできても、不安な気持ちのほうがどんどん大きくなっていくのをとめられませんでした。

式場で父が転んでしまったらどうしよう・・・

その姿を見た招待客はなんていうだろう・・・

ため息ばかりが出ました。

あっという間に月日は過ぎ去り、ついに結婚式当日を迎えました。

みんなから祝福される最高に幸せな日。

花嫁姿のわたしは、それでもやはり不安な気持ちで一杯だったのです。

控え室に入り、父の姿を見た私は、思わず驚いてしまいました。

フォーマル・スーツ姿の父の足元に、歩行練習の時にいつもはいていたあの白い運動靴が見えたのです。

「いったい誰が父に運動靴を履かせたの」

わたしは、そのことが気になってしかたがありませんでした。

式が終わるまでずっと、頭のなかから白い運動靴が消えませんでした。

それから数年がたちました。

父が危篤との連絡を受け、急いで病院に駆けつけました。

家族が見守るなかで、父がわたしの手をにぎりながら言いました。

「お前は自分の夫を大切にしなさい。

お父さんはね、お前の結婚式でお前の手を取って式場に入る自信は無かった。

でも、お前の夫が毎日訪ねてきてくれては励ましてくれて・・・

ころぶと危ないからって、運動靴まで買ってくれたんだ」

わたしは胸がいっぱいになって、何もいえませんでした。

すっかりすりきれた白い運動靴。

父は、その靴をもう一度はくことも無く、

静かに息を引き取りました。

_______

「世界でいちばん大切な思い 」

イ・ミエ (著), パク・インシク (著), 笛木 優子 (翻訳)

東洋経済新報社より

q01449

AD googleアドセンス

関連記事

母子家庭だったうちは、貧乏極まりなかった

子供の頃、 母子家庭だったうちは、貧乏極まりなかった。 高校になってから、母親が毎日お弁

記事を読む

なんくるないさぁ

SPEEDの今井絵理子さん。息子さんの障害について告白しています。 「なんくるないさぁ」とは沖縄の

記事を読む

私が会った子どもたちは みんな可愛かった

私が会った子どもたちは みんな可愛かった。 笑っている子ども、 ふざけている子ども、 赤ちゃ

記事を読む

特攻隊員の手紙

特攻隊の教官だった年配者の一人は、教え子が続々と出撃していく中で「必ずオレも後に続く!」と約束を繰り

記事を読む

『ママからのビデオメッセージ』

サキちゃんのママは重い病気と闘っていたが、 死期を悟ってパパを枕元に呼んだ。 その時、サキちゃん

記事を読む

情けは人の為ならず

通勤で電車を利用しないけど、 私用でたまに電車を利用したときは 周囲に老人が立っていると、

記事を読む

no image

おれが小学生の時、事故で両親が…

おれが小学生の時、事故で両親が死んだ。 その後親戚中をタライ回しにされた。 おれが「高校

記事を読む

父親の職場

大卒から勤続8年目。 俺は上司含め、同僚が苦手。 というかあまり好きではなかった。 ワ

記事を読む

今年、母が亡くなった。

遅い反抗期だったと思う。中学生まで親に逆らわず良い子だった俺が、高校生になり急に親に反抗するようにな

記事を読む

【過去からの手紙】

嫁が激しい闘病生活の末、若くして亡くなって五年後、こんな手紙が届いた。 どうやら死期が迫ったこ

記事を読む

AD googleアドセンス

AD googleアドセンス

お母さんのハンバーグ弁当の味

俺の母さんは、生まれつき両腕が不自由だった。 なので料理は基本的に父

「すぐツライと言うのは、ほんとはツラくないんだよ」その言葉忘れない。

大好きだったじぃちゃんが亡くなりました。 私は、小さい時からよく

【騙された花嫁】しかしその真実とは?

本当の親ではないパパと、騙されたその娘の結婚式。 騙された花嫁と

【実話】「他に男できたから別れよ!」…彼女に突如別れを告げられた俺に一本の電話が…(感動する話)【漫画動画】

「彼氏に心配かけたくなくて迷惑かけたくない」という気持ち と

嫌いな母親の顔の傷の秘密。もっとキレイなお母さんが良かったのに。

大嫌いな母親には大きな傷が。 それが母親を嫌いな原因。なんでそん

→もっと見る


PAGE TOP ↑